TOPICS 医療コラム

プレオルソは「つけるだけ」ではダメ?

「プレオルソを毎日つけていれば、自然に歯並びはきれいになりますか?」

「マウスピースを入れているのに、舌のトレーニングも必要なの?」

「家ではどんなことに気をつければいいのでしょうか?」

プレオルソによる小児矯正を検討している保護者の方から、このようなご質問をいただくことがあります。

プレオルソは取り外しのできるマウスピース型の矯正装置です。そのため、「決められた時間、装置をつけていれば治療が進む」というイメージを持たれることもあるかもしれません。

しかし、プレオルソによる小児矯正では、装置を使用することだけでなく、舌や唇、お口周りの筋肉を正しく使えるようにしていくことも重要です。

なぜなら、子どもの歯並びや噛み合わせには、歯やあごの大きさだけでなく、舌の位置、唇や頬から加わる力、呼吸や飲み込み方なども関係しているからです。

なんばエッセ歯科・小児歯科クリニックでは、歯並びだけを見るのではなく、お口の機能にも目を向けた小児矯正を大切にしています。

今回は、プレオルソを使用するうえでなぜMFT(口腔筋機能療法)が大切なのか、ご家庭ではどのようなことに気をつければよいのかについて詳しく解説します。



そもそもプレオルソとは?

プレオルソは、主に成長期のお子さまを対象とした、取り外し式のマウスピース型矯正装置です。

一般的なワイヤー矯正などは、装置から歯に力を加え、歯を計画的に移動させて歯並びを整えていきます。

一方、プレオルソは一本一本の歯を細かく移動させることだけを目的とした装置ではありません。

成長期のお子さまのお口周りの筋肉や舌の使い方などにも着目し、歯並びや噛み合わせがより良い方向へ成長できるようサポートしていく治療です。

取り外しができるため、学校に装着していく必要がないケースが多く、生活への負担を抑えながら取り組みやすいことも特徴の一つです。

ただし、取り外しができるからこそ、決められた方法や時間で継続して使用することが大切になります。


なぜ歯並びに「舌」や「唇」が関係するの?

歯は、何の影響も受けずにそこに並んでいるわけではありません。

歯の内側には舌があり、外側には唇や頬があります。

内側から舌が加える力と、外側から唇や頬が加える力。そのバランスの中で歯の位置は保たれています。

そのため、舌や唇の使い方に癖があると、歯並びや噛み合わせに影響することがあります。

例えば、舌で前歯を押す癖が続いている場合。

飲み込むたびに舌が前へ出て歯を押していると、前歯の噛み合わせに影響する可能性があります。

また、いつもお口がぽかんと開いている場合には、唇を閉じる力や舌の位置などを確認する必要があります。

つまり、小児矯正では、目に見えている「歯」だけでなく、その周囲で毎日繰り返されているお口の動きにも目を向けることが大切なのです。


「正しい舌の位置」を知っていますか?

普段何もしていないとき、ご自身の舌がどこにあるか意識したことはありますか?

実は、舌には安静時の適切な位置があります。

一般的には、舌先が上の前歯そのものを押すのではなく、その少し後ろ側にあり、舌全体が上あご側に収まっている状態が望ましいとされています。

しかし、お口ぽかんや口呼吸がみられるお子さまでは、舌が低い位置にある場合があります。

また、食べ物や飲み物を飲み込むときに、舌を前へ突き出してしまうお子さまもいます。

こうした舌の癖は毎日何度も繰り返されるため、小さな力であっても長期間続けば、歯並びや噛み合わせに影響する可能性があります。

だからこそプレオルソ治療では、装置を入れるだけではなく、普段の舌の位置や動かし方を確認することも大切になります。


「お口ぽかん」もチェックしてみましょう

テレビを見ているときやゲームをしているとき、お子さまのお口がぽかんと開いていませんか?

寝ているときに口が開いていたり、日中も無意識に口で呼吸していたりする場合もあります。

お口が開いた状態が習慣になっている場合、舌が適切な位置に収まりにくくなったり、唇を閉じるための筋肉が十分に使われにくくなったりすることがあります。

プレオルソでは、こうしたお口周りの環境にも目を向けます。

ただし、ここで注意したいのが、口呼吸の原因がすべて歯並びや癖にあるわけではないということです。

鼻炎や鼻づまり、扁桃・アデノイドなど、鼻や喉の問題が関係していることもあります。

その場合は、歯科でのトレーニングだけで解決しようとするのではなく、必要に応じて耳鼻咽喉科などでの診察も重要になります。


プレオルソを「つけるだけ」では十分ではない理由

プレオルソは、お口の環境を整えるための一つの手段です。

しかし、マウスピースを装着しただけで、それまで何年も続いてきた舌の癖や飲み込み方、お口の使い方がすべて自然に変わるとは限りません。

例えば、プレオルソを使用している時間は正しい位置に舌が誘導されていても、装置を外した瞬間に以前と同じ舌の位置へ戻ってしまえば、日常生活では元の癖が続いていることになります。

そこで重要になるのが、**MFT(口腔筋機能療法)**です。

装置によるサポートと、お口を正しく使うためのトレーニングを組み合わせることで、日常生活の中でも適切なお口の使い方を身につけていくことを目指します。


MFT(口腔筋機能療法)とは?

MFTとは「Oral Myofunctional Therapy」の略で、日本語では「口腔筋機能療法」と呼ばれています。

舌・唇・頬など、お口周りの筋肉の動きを整え、正しいお口の使い方を身につけるためのトレーニングです。

具体的な内容はお子さまのお口の状態によって異なりますが、

舌を適切な位置に置く練習、唇を閉じる練習、舌を正しく動かす練習、飲み込み方の練習などを行います。

大切なのは、筋肉を単純に「強くする」ことだけではありません。

必要な筋肉を、必要なタイミングで適切に使えるようにしていくことが目的です。


なぜMFTは毎日続けることが大切なの?

歯科医院でMFTを一度行っただけで、お口の使い方が完全に変わるわけではありません。

舌の位置や飲み込み方は、長い時間をかけて身についた「習慣」だからです。

例えば、姿勢を直そうと思っても、一度背筋を伸ばしただけでは、翌日からずっと正しい姿勢になるわけではありません。

お口の使い方も同じです。

歯科医院で正しい方法を確認し、それをご家庭でも繰り返すことで、少しずつ新しい使い方を身につけていきます。

そのため、プレオルソ治療ではお子さま本人だけでなく、保護者の方のサポートも重要になります。


ご家庭では「できたこと」を増やしていきましょう

毎日プレオルソやMFTを続けるとなると、

「ちゃんとやりなさい!」

「また忘れてるよ!」

と声をかけたくなることもあるでしょう。

しかし、小児矯正は短期間で終わるものではありません。

治療を続けていくためには、お子さま自身が前向きに取り組める環境づくりも大切です。

例えば、

「今日はちゃんとつけられたね」

「昨日より上手にできたね」

と、できていることを一緒に確認するのも一つの方法です。

特に低年齢のお子さまの場合、自分一人で毎日忘れずに管理することは簡単ではありません。

ご家族で装着する時間を決めたり、MFTを生活の中の決まったタイミングに組み込んだりすると、習慣化しやすくなります。


プレオルソを長時間つければ効果が高くなる?

「長くつければつけるほど、早く治りますか?」

というご質問をいただくことがあります。

しかし、自己判断で装着時間を増やせば、必ず治療が早く進むというものではありません。

プレオルソは、歯科医師の診断のもと、お子さまのお口の状態に合わせて使用する装置です。

使用方法や装着時間については、歯科医院から説明された内容を守ることが大切です。

また、装置をきちんと使用していても、成長のスピードや歯の生え変わり方には個人差があります。

「○か月使えば必ず治る」というものでもありません。

焦らず、お子さまの成長を確認しながら治療を進めていきましょう。


プレオルソを頑張れば、ほかの矯正は必要ない?

これもよくいただく質問です。

プレオルソとMFTにしっかり取り組んだからといって、必ずプレオルソだけですべての矯正治療が完了するとは限りません。

永久歯への生え変わりやあごの成長によっては、永久歯の位置をより細かく整える必要が出てくることがあります。

その場合、当院ではお口の状態に応じてインビザライン・ファーストなどの治療を検討することがあります。

これは「プレオルソが失敗した」ということではありません。

小児矯正では、お子さまの成長に合わせて、その時点で必要な治療を選択していくことが大切です。

プレオルソだけで終わらせることを目標にするのではなく、将来的に健康な歯並びや噛み合わせ、お口の機能を目指すことが治療の目的です。


定期的なチェックも治療の一部です

プレオルソとMFTを毎日頑張っていても、ご家庭だけでは分からない変化があります。

そのため、治療中は定期的に歯科医院でお口の状態を確認します。

装置を適切に使用できているかだけでなく、

歯並びや噛み合わせがどのように変化しているか、永久歯への生え変わりが進んでいるか、舌や唇の使い方に変化があるか、むし歯や歯ぐきのトラブルがないかなどを確認します。

特に4〜10歳頃は、お口の中が大きく変化する時期です。

数か月前にはなかった永久歯が生えてきたり、噛み合わせが変化したりすることもあります。

だからこそ、プレオルソを渡して終わりではなく、成長を継続的に見守ることが重要なのです。



小児矯正中もむし歯予防を忘れずに

プレオルソ治療を始めると、どうしても「歯並び」に意識が向きやすくなります。

しかし、小児矯正中だからこそ、むし歯予防も大切です。

乳歯から永久歯へ生え変わる時期は、歯の高さがそろっておらず、歯磨きが難しくなることがあります。

さらに、生えたばかりの永久歯はむし歯への注意が必要です。

なんばエッセ歯科・小児歯科クリニックでは、お口の状態に合わせて1〜3か月に一度の定期検診をおすすめしています。

定期検診では、むし歯や歯ぐきのチェックだけでなく、歯磨きの状態や永久歯への生え変わりなども確認し、必要に応じてブラッシング指導やフッ素塗布などの予防処置を行います。

歯並びを整えることと、大切な永久歯をむし歯から守ること。

この両方を同時に考えていくことが、健康なお口づくりにつながります。


「装置」だけではなく「お口全体」を育てる小児矯正へ

プレオルソという名前が知られるようになると、

「プレオルソを使えば歯並びが治る」

と、装置そのものに注目しがちです。

しかし、本当に大切なのは装置の名前ではありません。

なぜ現在の歯並びや噛み合わせになっているのかを確認し、歯・あご・舌・唇・呼吸・飲み込みなど、お口全体を見ながら必要なサポートを行うことです。

プレオルソが適しているお子さまもいれば、MFTを中心に行う場合や、インビザライン・ファーストなど別の治療が適している場合もあります。

なんばエッセ歯科・小児歯科クリニックでは、予防歯科をベースにした小児矯正を大切にしています。

矯正装置で歯並びだけを整えるのではなく、むし歯を予防し、お口の機能を育てながら、将来のお口の健康につなげていくことを目指します。


最後に

プレオルソ治療で大切なのは、「マウスピースをつけているから大丈夫」と考えないことです。

歯並びや噛み合わせには、舌の位置や唇の使い方、呼吸や飲み込み方など、普段何気なく行っているお口の動きが関係していることがあります。

だからこそ当院では、プレオルソという装置だけを見るのではなく、お子さまのお口全体を確認することを大切にしています。

MFTも、一度できれば終わりというものではありません。ご家庭で少しずつ続けながら、正しいお口の使い方を習慣にしていくことが重要です。

もちろん、お子さまによって成長のスピードや歯並び、お口の癖は異なります。

「ちゃんとできているのかな」「この使い方で合っているのかな」と心配になったときは、ご家庭だけで判断せず、いつでもご相談ください。

お子さまとご家族、そして歯科医院が一緒になって、健やかなお口の成長をサポートしていきたいと考えています。

監修者情報

監修者情報

理事長新原 拓也

Takuya Shinhara

当院では、できるだけご自身の歯を大切にする予防診療をベースに一般的な保険診療、セラミック等を用いた審美治療、小児歯科、矯正、インプラント等、幅広く包括的な治療を行って参ります。現在私は二児の子育て中でありますが、美しい歯並びを獲得するには幼少期からの食育や筋機能療法が有効であると強く感じております。