「うちの子、いつも口が開いている気がする……」
「頬杖をつく癖があるけど、歯並びに影響するの?」
「指しゃぶりはいつまで様子を見ても大丈夫?」
このようなご相談を、保護者の方からよくいただきます。
歯並びは「遺伝で決まるもの」と思われがちですが、実は遺伝だけではありません。毎日の生活習慣やお口の使い方、呼吸の仕方、舌の位置なども、お子さまの歯並びやあごの成長に大きく関わっています。
成長期のお子さまは、あごやお口周りの筋肉が発達する大切な時期です。この時期の癖や習慣が将来の歯並びに影響を与えることも少なくありません。
もちろん、すべての癖が必ず悪い歯並びにつながるわけではありません。しかし、早い段階で気づき、必要に応じて改善していくことで、お口の健やかな成長をサポートできる可能性があります。
今回は、お子さまの歯並びに影響を与えやすい生活習慣や癖について詳しく解説します。
歯並びは毎日の習慣で変わることがある
歯は硬く動かないものと思われがちですが、実際には周囲から受ける力のバランスによって少しずつ位置が変化します。
舌は普段から歯の内側に軽く触れており、唇や頬は外側から歯を支えています。この内側と外側の力のバランスが取れていることで、歯並びは安定しています。
しかし、舌で前歯を押す癖があったり、口が開いたままの状態が続いたりすると、そのバランスが崩れ、歯並びやあごの成長に影響することがあります。
つまり、お子さまが何気なく行っている毎日の習慣が、将来の歯並びにつながっていることもあるのです。
口呼吸は歯並びに影響する?
近年、とても増えているのが口呼吸です。
本来、人は鼻で呼吸することが理想です。しかし、鼻づまりや習慣などが原因で口呼吸が続くと、お口の中が乾燥しやすくなります。
唾液には、むし歯菌の働きを抑えたり、お口の中をきれいに保ったりする働きがあります。そのため、お口が乾燥するとむし歯や歯肉炎のリスクが高くなることがあります。
さらに、口呼吸では舌が本来あるべき上あごの位置ではなく、低い位置に下がりやすくなります。
舌は上あごの成長を支える役割も担っているため、舌の位置が低いままだと、あごが十分に発達せず、歯が並ぶスペースが不足する原因になることもあります。
日中だけでなく、寝ているときに口が開いている、いびきをかくことが多いといった場合も、一度歯科医院で相談することをおすすめします。
舌の癖も歯並びに関係します
舌は食べたり話したりするときだけでなく、普段から正しい位置にあることが大切です。
本来、安静時の舌は上あごに軽く触れている状態が理想とされています。
しかし、舌が前歯を押す癖があったり、常に下の方にある状態が続いたりすると、前歯が前方へ押し出され、出っ歯や開咬(前歯が閉じない状態)の原因になることがあります。
また、飲み込むたびに舌で歯を押していると、長い時間をかけて歯並びに影響を及ぼすことがあります。
一見すると分かりにくい癖ですが、お子さまの歯並びやかみ合わせに大きく関わるため、早めに気づくことが大切です。
指しゃぶりはいつまで大丈夫?
乳幼児期の指しゃぶりは、安心感を得たり心を落ち着かせたりする自然な行動です。
しかし、4〜5歳頃になっても長時間続く場合は、歯並びへの影響が出始めることがあります。
指をくわえることで前歯に力が加わり、出っ歯や開咬になることがあります。
また、上あごが狭くなり、永久歯がきれいに並ぶスペースが不足する原因になることもあります。
無理にやめさせようとすると逆効果になる場合もあるため、お子さまの成長に合わせて適切に対応することが大切です。
気になる場合は歯科医院で相談し、お口の状態を確認してもらいましょう。
頬杖やうつぶせ寝にも注意
普段何気なく行っている頬杖やうつぶせ寝も、長期間続くことであごや歯並びに影響することがあります。
頬杖をつくと、あごに横方向から力がかかり続けます。
毎日同じ方向に力が加わることで、かみ合わせがずれたり、顔の左右差につながったりする可能性があります。
また、うつぶせ寝や横向き寝で顔を強く押し付ける姿勢が習慣になると、お口周りに偏った力がかかることがあります。
もちろん一度や二度で歯並びが変わるわけではありませんが、毎日の積み重ねが影響することもあるため注意が必要です。
姿勢も歯並びに関係しています
最近では、タブレットやスマートフォンを使用する時間が増えたことで、猫背のお子さまも多く見られます。
姿勢が悪くなると頭が前に出やすくなり、お口が開いた状態になりやすくなります。
その結果、口呼吸になったり、舌の位置が下がったりして、お口の機能や歯並びに影響することがあります。
正しい姿勢は、お口だけでなく全身の成長にも関係しています。
食事や勉強のときの姿勢にも目を向けてみることが大切です。
小児矯正は歯だけを動かす治療ではありません
小児矯正というと、「歯を並べる治療」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし実際には、お子さまの成長を利用しながら、お口全体の環境を整えていく治療です。
当院では、お子さまのお口の状態に合わせてプレオルソやインビザライン・ファーストを取り入れています。
プレオルソは、お口周りの筋肉や舌の機能改善を目指すマウスピース型矯正装置です。
一方、インビザライン・ファーストは、透明なマウスピースを使用し、永久歯への生え変わりの時期に歯並びを整えていく矯正方法です。
どちらも、お子さまの成長を活かしながら治療を進められることが特徴です。
MFT(口腔筋機能療法)でお口の癖を改善
当院では、小児矯正とあわせてMFT(口腔筋機能療法)も行っています。
MFTでは、舌の正しい位置や飲み込み方、鼻呼吸、口を閉じる力などをトレーニングし、お口周りの筋肉を正しく使えるように練習していきます。
歯並びだけを整えても、お口の癖が残ったままでは後戻りすることがあります。
だからこそ、歯だけではなく、お口の機能そのものを改善することが重要です。
小さい頃から正しいお口の使い方を身につけることは、将来の健康なお口づくりにもつながります。
定期検診で早めに気づくことが大切
歯並びやお口の癖は、ご家庭だけでは気づきにくいこともあります。
そのため、定期的に歯科医院でチェックを受けることが大切です。
当院では、お子さまのお口の状態に応じて1〜3か月に一度の定期検診をおすすめしています。
定期検診では、むし歯のチェックだけでなく、生え変わりや歯並び、お口の癖なども確認しています。
必要に応じてフッ素塗布や専門的なクリーニングを行い、健康なお口の環境づくりをサポートしています。
「まだ矯正が必要か分からない」という段階でも、お口の成長を見守ることができますので、お気軽にご相談ください。
最後に
お子さまの歯並びは、遺伝だけで決まるものではありません。
毎日の生活習慣やお口の使い方が、成長とともに歯並びへ影響を与えることがあります。
だからこそ、歯並びだけを見るのではなく、お口の機能や生活習慣も含めて診ることが大切だと考えています。
当院では、プレオルソやインビザライン・ファースト、MFTを組み合わせながら、お子さま一人ひとりに合った治療や予防をご提案しています。
「少し気になる」という段階でも構いません。早めにお口の状態を知ることが、将来の健康なお口につながります。