子どもの歯並びと癖(指しゃぶり・舌癖)の関係
~早めの気づきと予防が将来のきれいな歯を守ります~
お子さんの歯並びについて「少し前歯が出てきた気がする」「上下のかみ合わせが合っていないかも」と心配される保護者の方は少なくありません。
実は、子どもの歯並びは生まれ持った骨格だけで決まるわけではなく、日常の癖や習慣が大きな影響を与えることをご存じでしょうか。特に「指しゃぶり」や「舌の使い方(舌癖)」は、顎の成長や歯の並び方に深く関係しています。
当院でも、歯並びの乱れの相談を受ける際、単なる見た目の問題だけでなく、お口の使い方や癖が背景に隠れていることが多くあります。今回は、指しゃぶり・舌癖と歯並びの関係をわかりやすく解説し、早期にできる対応や当院の小児矯正の取り組みまでお話しします。
子どもの歯並びを決める要素
歯並びは「遺伝的な要因」と「環境的な要因」の両方で決まります。顎の大きさや歯のサイズはある程度遺伝しますが、それ以上に影響を与えるのが、日常的な口の動きや癖です。
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顎の成長は刺激によって促される
かむ・飲む・しゃべるといった行為は、顎の骨をバランスよく発育させる大切な刺激です。逆に、柔らかいものばかり食べていると顎が小さくなり、歯が並びきれずガタガタになりやすくなります。 -
舌や唇の位置も歯並びに影響する
歯は舌から内側への押す力と、唇や頬からの外側の押す力のバランスで位置を保っています。舌や唇の使い方が偏ると、前歯が出たり開咬になったりする原因になります。
このなかでも、特に重要で見逃されがちなのが指しゃぶりと舌癖です。
指しゃぶりと歯並びへの影響
指しゃぶりは何歳まで大丈夫?
赤ちゃんの指しゃぶりは成長の自然な一部です。乳児期の指しゃぶりは自己安心行動で、1歳半〜2歳頃までは問題ありません。多くの子どもは成長とともに自然にやめていきます。
しかし、3歳以降も続く指しゃぶりは注意が必要です。特に、日中もしっかり指を吸っていたり、寝るときだけでなく普段から頻繁にしている場合、歯並びや顎の発育に影響するリスクが高まります。
指しゃぶりによる歯並びの変化
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出っ歯(上顎前突)
指をくわえると上の前歯が前に押し出され、下の前歯は後ろに押されるため、上顎前突になりやすくなります。 -
開咬(前歯がかみ合わない)
指が前歯の間にある状態が続くと、上下の前歯がかみ合わず隙間ができてしまう「開咬」になります。 -
上顎の狭窄
指をくわえることで上顎が内側に押され、顎が狭くなり、歯が並びきれなくなることがあります。
指しゃぶりの程度・強さ・頻度によっては顎の骨の形そのものが変わる場合もあるため、早めにやめることが望ましいです。
舌癖(ぜつへき)と歯並びへの影響
舌癖とは?
「舌癖」とは、舌の位置や使い方が正常ではない状態を指します。
本来、舌は安静時に上あごの裏に軽く触れているのが理想ですが、舌癖のあるお子さんは舌が下に落ちていたり、飲み込むときに前歯を押していたりします。
舌癖が歯並びを乱す仕組み
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開咬の原因
飲み込むときに舌を前に突き出す癖があると、前歯がかみ合わず開咬になりやすくなります。 -
出っ歯を助長する
舌が常に前歯を押していると、上の前歯がさらに前に出やすくなります。 -
歯列の狭窄
舌が正しい位置にないと、上顎が横に広がらず、歯が並ぶスペースが不足します。
舌癖のサイン
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飲み込むときに唇を強く閉じている
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舌が前歯の間から見える
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普段、口がポカンと開いている(口呼吸)
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サ行やタ行の発音が不明瞭
このような症状がある場合、舌癖の可能性があります。
早めの気づきが大切な理由
指しゃぶりや舌癖による歯並びの問題は、成長期のうちに改善すれば自然な回復が期待できることがあります。
逆に永久歯が生えそろう時期まで放置すると、自然に治る可能性が低くなり、ワイヤー矯正や抜歯が必要になるケースもあります。
3〜6歳頃は習慣の修正がしやすく、顎の成長をコントロールできる貴重な時期です。
「指しゃぶりがやめられない」「口がいつも開いている」といった小さなサインを見逃さないことが、将来の大きな矯正治療を防ぐ第一歩になります。
当院で行う早期予防矯正(プレオルソ+MFT)
当院では、指しゃぶりや舌癖が原因で歯並びに影響が出そうなお子さんには、プレオルソ(マウスピース型矯正装置)を活用しながら、MFT(口腔筋機能療法)を組み合わせたサポートを行っています。
プレオルソの特徴
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やわらかいマウスピースで痛みが少ない
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日中1時間+就寝中に装着するだけの簡単な使用方法
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顎の成長を助け、永久歯が生えるスペースを確保しやすくする
MFT(口腔筋機能療法)の特徴
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舌の正しい位置を覚えるトレーニング
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唇をしっかり閉じる力を育てる練習
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飲み込み方や発音を改善し、口呼吸から鼻呼吸へ導く
プレオルソで歯並びや顎の成長をサポートしつつ、MFTで舌や唇の正しい使い方を身につけることで、根本的な原因から改善を目指します。
この2つを組み合わせることで、単に歯を並べるだけでなく、整った歯並びを長く維持することが可能になります。
保護者ができるおうちでのサポート
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指しゃぶりをやめる工夫
手を使う遊びを増やしたり、就寝時にぬいぐるみを握るなど代わりの安心アイテムを活用します。 -
正しい舌の位置を意識させる
舌を上あごにつけて「ポン」と音を出す練習や、飲み込み時に前歯を押さないよう指導することも有効です。 -
口呼吸の改善
鼻づまりがないか耳鼻科で確認したり、口を閉じる習慣をサポートします。
ただし自己流で無理にやめさせるとストレスになることもあります。うまくいかない場合は歯科でご相談ください。
定期検診で早期発見・早期対応を
歯並びの乱れを防ぐには、定期的な歯科検診も欠かせません。
定期検診では歯の萌出の方向や顎の成長の状態を確認でき、必要に応じて早期介入のタイミングを見極められます。
特に指しゃぶりや舌癖が続いているお子さんは、歯並びの変化を放置せず、数か月ごとにチェックすることが将来の大きな矯正を防ぐ鍵になります。
まとめ
子どもの歯並びは、日常の小さな癖が大きな影響を与えることがあります。特に指しゃぶりや舌癖は顎の発育や噛み合わせを乱す原因になりやすいため、早めの気づきと適切な対応が重要です。
当院では、プレオルソによる早期予防矯正とMFT(口腔筋機能療法)を組み合わせることで、歯並びを乱す習慣そのものを改善し、将来の大きな矯正治療の必要性を減らすサポートをしています。
もし「指しゃぶりがやめられない」「口がポカンと開いている」「発音が気になる」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。小さなサインを見逃さず、成長に合わせたサポートを行うことで、将来の大きな歯科治療を防ぐことができます。
お子さんの未来の笑顔のために、今できることを一緒に始めていきましょう。