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学校検診で「要注意」と言われたら?

学校検診で“要注意”と言われたら?

~歯科医院で確認すべきポイントと正しい対応法~

春から初夏にかけて、多くの学校で「学校歯科検診」が行われます。
お子さんが持ち帰ったプリントに「C」「CO」「歯石」「要観察」「要受診」などと書かれていて、少し不安になったという保護者の方も多いのではないでしょうか。

学校歯科検診は、お子さんの歯や顎の健康状態をチェックする大切な機会です。
ただし、検診は限られた時間での目視確認が中心のため、「要注意」と書かれていても、すぐに深刻な状態というわけではありません。
とはいえ、放置してしまうと虫歯や歯並びの乱れが進行することもあります。

今回のコラムでは、学校歯科検診で「要注意」や「要受診」と言われたときに確認しておきたいポイントと、
とくに歯並びを指摘された際の当院での対応方法について、詳しくご説明します。



学校歯科検診の目的と限界

学校歯科検診は、文部科学省の指針に基づいて行われる健康診断の一環で、虫歯や歯肉炎、歯並び、顎の発育、口呼吸の有無などを幅広くチェックします。
目的は「病気を診断すること」ではなく、「異常の可能性を早めに見つけること」にあります。

そのため、短時間での目視検査が中心であり、レントゲンや特殊器具を使った精密検査は行われません。
つまり、学校検診の結果はあくまで“きっかけ”であり、実際の診断は歯科医院で行う必要があるのです。



検診結果に書かれている言葉の意味

CO(要観察歯)

COとは「Caries Observation(カリエス・オブザベーション)」の略で、虫歯の初期段階を意味します。
歯の表面が白く濁っていたり、柔らかくなり始めていたりする段階で、まだ穴があいていません。
この状態であれば削らずに、フッ素塗布やブラッシング指導で再石灰化を促すことができます。
ただし放置すると虫歯に進行してしまうため、早めに受診し、進行状況を確認することが大切です。

C(虫歯)

Cは虫歯そのものを意味します。学校検診では進行度まで判断されませんが、歯科医院ではレントゲン撮影などで正確に診断します。
初期の虫歯なら経過観察も可能ですが、進行している場合は治療が必要です。
痛みがないうちに受診すれば、削る範囲を最小限に抑えられます。

歯肉炎・歯石

歯ぐきの腫れや出血、歯石の付着などが見られると「歯肉炎」や「歯垢沈着」と記載されます。
小学生でも歯ぐきのトラブルは珍しくなく、特に仕上げ磨きを卒業した時期は磨き残しが多くなりがちです。
歯ぐきが赤く腫れていたり、出血が続く場合は、早めのクリーニングとブラッシング指導で改善が期待できます。

歯並び・咬み合わせ

近年、学校検診で「歯並び」や「咬合異常(こうごういじょう)」を指摘されるお子さんが増えています。
見た目の問題だけでなく、噛みづらさや発音のしづらさ、鼻呼吸ができないなど、お口の機能そのものに影響することがあるため、注意が必要です。
歯並びの乱れは「顎の成長のバランス」や「舌・唇の使い方」とも深く関係しています。



要注意と書かれたときの正しい行動

まず大切なのは、早めに歯科医院で精密検査を受けることです。
学校検診は目視のみの確認なので、実際の状態は歯科医院で詳しく見てみないと分かりません。
歯科医院ではライトや拡大鏡、レントゲンを用いて虫歯の進行度や歯ぐきの状態を確認します。
検診用紙を持参すれば、歯科医が該当箇所を把握しやすく、スムーズに診察が進みます。

COや軽度の歯肉炎であれば、フッ素塗布・シーラント・ブラッシング指導など、短時間でできる処置で十分です。
一方、歯並びや噛み合わせの問題を指摘された場合は、成長期のうちに対応することが将来の大きな矯正を防ぐカギとなります。



歯並びを指摘されたときに考えたいこと

歯並びの乱れは、単なる見た目の問題ではありません。
顎の発育バランスが崩れることで、咬み合わせが悪くなり、咀嚼や発音、姿勢にまで影響を与えることがあります。
また、口呼吸や舌癖(舌を前に出す癖)があると、歯が外側に押し出されて出っ歯になったり、上下の前歯が噛み合わない開咬になったりすることもあります。

当院では、このようなお子さんの成長期に合わせて、
プレオルソ(マウスピース型矯正装置)、MFT(口腔筋機能療法)、そしてインビザライン・ファースト(Invisalign First)を組み合わせた治療を行っています。



プレオルソ・MFT・インビザラインファーストの違いと特徴

プレオルソ

プレオルソは柔らかいシリコン素材のマウスピースを使用し、顎の発育を促しながら歯並びや噛み合わせを整えます。
日中1時間と就寝時に装着するだけで、痛みが少なく、低年齢のお子さんにも負担の少ない矯正法です。
また、歯を「動かす」のではなく、正しい顎の発育と筋肉バランスを整えることを目的としています。


MFT(口腔筋機能療法)

MFTは、舌や唇の筋肉を正しく使えるようにトレーニングする方法です。
発音、飲み込み、呼吸、姿勢などの改善を通して、歯並びが乱れにくい環境を整えます。
たとえば、「舌を上あごにつける練習」や「唇を閉じて鼻で呼吸する練習」などを行い、正しい口の機能を育てます。
プレオルソと併用することで、より安定した矯正効果を得られます。


インビザライン・ファースト(Invisalign First)

さらに、永久歯への生え変わりが始まる6〜10歳頃のお子さんには、インビザライン・ファーストが有効です。
透明なマウスピースを数週間ごとに交換しながら歯を少しずつ動かしていく矯正方法で、装置が目立たず、学校生活でも安心して装着できます。

インビザライン・ファーストは、単に歯を並べるだけではなく、顎の発育をコントロールしながら歯がきれいに並ぶスペースを作るという特徴があります。
また、取り外し可能なため食事や歯磨きの妨げにならず、衛生的に保ちやすいのもメリットです。

当院では、お子さんの年齢や成長段階に応じて、プレオルソ・MFT・インビザラインファーストを組み合わせた最適な治療を提案しています。
このように早期からのアプローチを行うことで、将来的に抜歯や大がかりなワイヤー矯正が不要になるケースも多くあります。



よくある質問

Q. 学校検診で「虫歯なし」と言われたのに、歯医者で虫歯が見つかりました。なぜですか?
学校検診は短時間の目視で行われるため、歯と歯の間や裏側の虫歯までは確認できません。歯科医院ではライトやレントゲンを使うため、より正確に診断できます。

Q. 痛みがないのに受診する必要はありますか?
はい。虫歯や歯肉炎の初期は痛みが出ないことが多く、「痛みが出たとき」にはすでに進行していることがほとんどです。「要観察」と書かれていたら、早めの受診をおすすめします。

Q. 子どもの歯並びは成長すれば自然に治りますか?
一部は自然に改善することもありますが、顎の成長方向や癖の影響で悪化するケースもあります。特に口呼吸や舌癖がある場合は、MFTなどで早期対応することが重要です。



まとめ

学校検診で「要注意」や「要受診」と言われたときこそ、お子さんの歯の健康を見直す絶好のチャンスです。
検診結果をきっかけに早めに受診することで、虫歯の進行を防ぐだけでなく、歯並びや顎の成長のトラブルにも早期に対応できます。

当院では、虫歯予防から成長期矯正(プレオルソ・MFT・インビザラインファースト)まで、お子さん一人ひとりの発育に合わせたケアを行っています。
お口の中の小さな「違和感」や「要注意」を、そのままにしないことが将来の健康な笑顔につながります。

どうぞお気軽にご相談ください。
お子さんの成長に寄り添いながら、健やかな歯と美しい笑顔を一緒に育てていきましょう。

監修者情報

監修者情報

理事長新原 拓也

Takuya Shinhara

当院では、できるだけご自身の歯を大切にする予防診療をベースに一般的な保険診療、セラミック等を用いた審美治療、小児歯科、矯正、インプラント等、幅広く包括的な治療を行って参ります。現在私は二児の子育て中でありますが、美しい歯並びを獲得するには幼少期からの食育や筋機能療法が有効であると強く感じております。